コンテンツ詳細
クビワコウモリ
1.種の解説
前腕長38~43 mm、頭胴長54~68 mm、尾長35~43 mm、体重8~13 g。体毛は背面が黒褐色で腹面は明黄褐色。頸部にかすかな淡色の横帯があるのでこの和名がある。日中のねぐらとして家屋を利用する事例が多い。日没後に開放空間を飛翔して採餌する。長野県の乗鞍高原の家屋では最大300個体の出産哺育集団が確認されている。冬季の観察例はない。再捕獲による生存記録は13年が知られている。
2.分布
日本固有種で、本州の中部以北に分布し、福島県、栃木県、埼玉県、石川県、山梨県、長野県、富山県及び岐阜県で発見例があり、長野県の乗鞍高原は国内で唯一知られた出産哺育場所である。本県は主たる分布の南限に当たる。1975年7月に富士山麓での捕獲記録があるが詳細は不明で、確実な記録は2009年7月に静岡市葵区田代の標高2,000 m付近での記録である。その後も同所において個体数は少ないものの毎年確認されている。
3.生息環境
県内では針葉樹・広葉樹混交の原生林に生息すると考えられるが、記録が少なく詳細は不明である。南アルプスの山梨県側では標高1,450 m付近のカラマツ植林、長野県側では標高450 mの2次林の渓畔林で確認されている。
4.生息状況
南アルプスでは妊娠個体が確認され、長野県・山梨県側の南アルプスでも出産哺育に係る情報がえられていることから、県内の南アルプスで出産哺育が行われていると考えられる。2016年8月には2010年7月に標識された授乳痕のあるメスが再捕獲されている。
5.減少の主要因と脅威
確認場所と確認個体数が少なく、減少の主要因は不明である。本県は主たる分布の南限に当たることから、元来、生息個体数が少ない種であるかもしれない。しかし、局所的に分布している可能性があり、自然林の伐採や開発行為によるねぐらの減少が脅威になると推察される。
6.保護対策
長野県の乗鞍高原ではコウモリ専用の小屋が建設され、継続的なモニタリング調査が実施されている。県内でも生息状況把握のための継続調査を実施し、長野県同様のコウモリ小屋の整備が望まれる。
(静岡県版レッドデータブックより)