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チチブコウモリ
1.種の解説
前腕長38~43 mm、頭胴長47~62 mm、尾長40~52 mm、体重8~15 g。耳介は幅広で大きく、その基部は結合して耳珠は三角形。吻は幅広く両側に毛を密生した腺状の隆起がある。体毛は上下面とも黒褐色で霜降り状を呈する個体もいる。日中は洞窟、樹洞、建造物などをねぐらとする。夜間に樹冠付近を飛翔し昆虫類を採餌する。
2.分布
国外では、イスラエルからコーカサス、インド北部、中国西部に分布し、国内では北海道、本州、四国で確認されているが、本州の記録はきわめて少ない。県内では1886年の旧豊田郡野部村(現在の磐田市下野部付近)での確認以降記録がなかったが、2006年に浜松市天竜区において120年ぶりに発見された。その後、毎年数頭が川根本町の隧道や廃隧道で越冬している。2016年には活動期の9月に静岡市葵区田代において確認された。
3.生息環境
県内の活動期の主な生息環境は、ねぐらとなる樹洞を有する自然林と考えられるが詳細は不明である。岐阜県で8月に乳腺が発達したメスが捕獲されていることを考慮すると、県内の9月の捕獲場所は出産哺育場所に近い可能性が高いが、通過個体の可能性もある。
4.生息状況
活動期の生息状況は確認例が少ないことから不明である。南アルプスの長野県側では、冬期に30個体程度が確認される地域があるが、県内では1~2個体と少ない。なお、2010年2月に標識したメス個体が2015年2月に同じ場所で再捕獲されている。
5.減少の主要因と脅威
減少の主要因は不明である。冬眠場所として少数個体が利用する隧道は人の出入りが可能であることから、隧道の改修や人の立ち入りの影響が脅威となる。活動期の生息場所については、森林の伐採や植生の単一化によるねぐら環境の減少及び開発行為による餌昆虫類の減少が脅威と推察される。
6.保護対策
本県では越冬場所の隧道を保全することが第一である。また、今後は活動期の生息場所を把握するための調査や、既知冬期確認場所の継続的調査などを行い、個体群としての情報を収集する必要がある。
(静岡県版レッドデータブックより)