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ヒナコウモリ
1.種の解説
前腕長44~54 mm、頭胴長60~79 mm、尾長33~50 mm、体重14~30 g。冬季は黒褐色の体毛に先端の白い刺毛が混ざり霜降り状。夏季のメスは明茶色。年1回初夏に2仔を出産する。日中のねぐらは樹洞や家屋などの人工物を利用し、夜間、比較的高空を飛翔して昆虫類を採餌する。近年、新幹線高架を集団で出産哺育や越冬に利用していることが判明している。再捕獲による生存記録は青森県で11年が知られ、青森県から京都府までの約784 kmを移動した事例がある。
2.分布
国外ではシベリア東部、中国東部、台湾に、国内では北海道、本州、四国、九州に分布する。県内では2003年に富士宮市の東京農業大学富士畜産農場で約100年ぶりに確認されている。その後、浜松市天竜区水窪町及び静岡市葵区で越冬集団が、南アルプスで単独個体が捕獲または目視で確認されている。
3.生息環境
南アルプスの越冬集団は、常緑広葉樹林帯の隧道の繋ぎ目で9個体、家屋の隙間で20個体が確認されている。単独での確認事例のうち、静岡市葵区田代の記録(標高約850 m)以外は比較的低標高地の記録である。
4.生息状況
南アルプスでは集団越冬地が2ヶ所確認されたが、出産哺育に係る情報は得られていない。単独で確認された時期も越冬期前後の記録が多かった。富士山及び伊豆地域での確認はなく、2004年以降に実施した高架橋などのねぐら調査でも確認がなかったことから、現状の生息個体数は少ないと考えられる。
5.減少の主要因と脅威
これまでの確認記録が少なく、減少の主要因は不明である。しかし安定・増加を妨げる森林伐採や社寺林の樹洞埋設等によるねぐらの減少、風力発電施設への衝突死は脅威と推察される。
6.保護対策
青森県ではコウモリ専用の小屋が建設され、現在まで出産哺育が継続している。県内では活動期の生息状況調査や既知冬季確認場所の継続調査などを実施するとともに、可能な場合は青森県同様の人工的なコウモリ小屋の整備が望まれる。
(静岡県版レッドデータブックより)
