コンテンツ詳細
ヤマセミ
1.種の解説
全長約38 cm。日本に生息するカワセミ類で最大。体の上面は白と黒のまだら模様で下面は白い。頭の羽は長く冠羽状。雌雄ほぼ同色だがオスの胸には橙色の斑があり、メスにはない。オスの翼下面は白色でメスは橙色をしている。水中を泳ぐアユ、アマゴ、ウグイ、オイカワなど主に魚類を枝から飛び込んで捕食する。人に対する警戒心が強い。留鳥(対象:生息地)。
2.分布
国外ではヒマラヤ、ミャンマー、ラオス、ベトナム北部、中国雲南省などに分布する。国内では本州、四国、九州に分布し、北海道には亜種エゾヤマセミM. l. pallida が分布する。県内では山間地の河川などに分布する。
3.生息環境
河川の中流から上流、ダム湖などの水辺に生息する。生息地に近い土や砂地の崖や土手に直径約10 cm、奥行き約1 mの横穴を掘って営巣する。
4.生息状況
1980年代には県内各地の河川に広く生息していた。1990年代前半の西部地域では、天竜川の飛竜大橋東の磐田市神田・敷地、浜松市浜北区宮口の蛭沢奥池付近の崖地など平地と丘陵部の境付近に営巣していた。その後上流部への後退が続き、現在では秋葉ダム湖から上流でないと生息しなくなった。この傾向は県内全域でみられ、個体数も著しく減少している。分布図で新旧の記録を見比べると、伊東市の1例をのぞいて、全域で北緯35度0分以北に後退していることがわかる。
5.減少の主要因と脅威
1970~80年代には船明ダム付近や敷地の獅子鼻公園などの道路脇の手の届く場所に巣穴を掘って営巣していたが、その巣穴を大人の靴大の石で塞いであるものを2例見ている。1例は石を除けると本種の親が飛び出してきた。もう1例は飛び出してこなかったので、中で死んでいるものと思われた。このようないたずらの対象になるほど一般的であったが、1990年代には高い崖の上の方にしか営巣しなくなった。さらに生息河川の護岸改修や川辺の林の伐採、また林道の崖への崩落防止のコンクリート吹付や金網張りなどによる営巣適地の減少が主要因と考えられる。なお、本種の減少と餌資源が競合するカワウの山間地への進出の時期が似ており、因果関係については今後の研究課題である。
6.保護対策
近年の著しい減少を考慮し、河川上流域の生息環境と営巣に必要な土崖の保全対策が必要と考えられる。
(静岡県版レッドデータブックより)
.jpg)