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アカショウビン
1.種の解説
全長約27 cm。太くて大きな赤い嘴を持ち、全身が赤褐色のカワセミ類。腰の部分に青い羽毛がある。雌雄ほぼ同色である。梅雨の時期に「キョロロロロロロ・・・」と尻下がりの特徴的なさえずりが聞かれることから、水乞い鳥の方言名がある。餌としてモリアオガエルなどのカエル類、サワガニ、小魚などの他に昆虫類も捕食する。夏鳥(対象:繁殖地)。
2.分布
国外では朝鮮半島からやや北の地域及びヒマラヤからインドネシアまで繁殖する。国内では北海道から南西諸島まで夏鳥として繁殖し、台湾以南で越冬する。県内では西部地域には多く、東部・伊豆地域にはきわめて少ない。
3.生息環境
標高200 m前後の丘陵地から山地の沢や湿地のある落葉広葉樹林に生息する。朽ち木に穴を穿って営巣する。大径木の朽ち木が少なくなり、住宅難から大きなスズメバチの巣に穴をあけて営巣した例が1988年に初報告されて以来、各地で聞かれるようになった。50年以上も前に、全国屈指の野鳥の多い富士山麓地域にはよい落葉広葉樹林が広がっているのに、本種だけが稀であることとその理由を指摘した学者がいた。水(沢)が乏しいからであると(清棲,1966)。
4.生息状況
5月下旬頃に渡ってきて落葉広葉樹林に生息し繁殖する。東部・伊豆地域は以前どおり少なかったが、西部・中部地域では2016年に精査した結果、予想以上に生息していることが明らかになった。温暖化の影響かどうか、この状態が続くのかどうかは即断できないが、個体数の面だけを見れば当面の危機はないと思われるので、カテゴリーを1ランク下げて様子を見ることにした。
5.減少の主要因と脅威
戦後の拡大造林から近年に至るまで奥地に至る広大な落葉広葉樹林が伐採されてスギ・ヒノキの人工林に変わり、生息適地の森林環境と営巣可能な大径木が減少した。
6.保護対策
樹洞を利用する種は巣箱設置により保護が可能になるが、全国各地で巣箱設置が行われているのにもかかわらず、本種が巣箱を利用したとの報告例はなかった。そこで、コルクを用いた新たな巣箱が開発され、期待が寄せられている。
(静岡県版レッドデータブックより)