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ヤマトイワナ

サケ科魚類のイワナSalvelinus leucomaenisの亜種。他の亜種は体側背部を中心に多数の白い斑点を終生にわたってもつが、ヤマトイワナは白い斑点が目立たず、とくに背部には全くないものが多い。体側下部を中心に橙色の有色斑点をもつ個体が多いが、地域によって差があり、全く斑点がない集団もみられる。なお、幼時には白い斑点を有し、成長とともに背側は消失し、腹側は有色斑点に変化していくものが多い。

1.種の解説
サケ科魚類のイワナSalvelinus leucomaenisの亜種。他の亜種は体側背部を中心に多数の白い斑点を終生にわたってもつが、ヤマトイワナは白い斑点が目立たず、とくに背部には全くないものが多い。体側下部を中心に橙色の有色斑点をもつ個体が多いが、地域によって差があり、全く斑点がない集団もみられる。なお、幼時には白い斑点を有し、成長とともに背側は消失し、腹側は有色斑点に変化していくものが多い。
2.分布
日本固有亜種で、富士川または相模川から紀伊半島までの太平洋側の河川の源流域に分布し、県内では大井川と天竜川の上流域の本支川に分布する。
3.生息環境
夏季の最高水温が約15℃以下の大河川の源流域に生息し、大井川では標高2,000 m以上の源流域にも生息している。春季には水生昆虫も利用するが、夏季などの活動期には陸生昆虫が主食となるため、流域の豊かな植生も生息条件として重要である。
4.生息状況
現在、県内で生息が確認されているのは、大井川と天竜川の上流の本支川の、ごく少数の河川の最上流域の一部に限られている。現在、1980年代まで確認があったいくつかの河川では生息が途絶えた。
5.減少の主要因と脅威
電源開発や林地開発によって生息環境が悪化してきているが、最も重要な問題は、別亜種の放流に伴う遺伝子汚染である。渓流釣りが盛んな河川では、増殖事業や個人放流によってニッコウイワナなどの外来イワナが放流され、交雑することにより在来のヤマトイワナが著しく減少している。
6.保護対策
外来イワナの遺伝子を完全に除去することは困難で、大井川水系では、現時点で純粋な在来集団の特徴が外部形態・遺伝子とも明確でない。外来イワナの放流と分布拡大を完全に防止したうえ、在来集団の特徴と識別方法を釣り人などに周知し、外来イワナの特徴を有する個体を選択的に除去していくべきである。また、在来集団の保護・増殖のためには、種苗放流をやめ、産卵場造成などの手法を採用するべきである。
(静岡県版レッドデータブックより)

写真提供:特定非営利活動法人静岡県自然史博物館ネットワーク