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クモマベニヒカゲ
開張およそ45 mm。黒褐色の地色に橙色の帯があり、その中に黒点が縦に並ぶ。後翅裏面の橙色帯の内側に白い帯がはっきりと現れる。幼虫はイネ科、カヤツリグサ科の草本を食べることが各地から記録されているが、県内では調べられていない。1年目の冬を卵で越し、2年目は幼虫で越冬し、3年目に成虫になるとされるが、はっきりとは調べられていない。高山蝶の一種。
1.種の解説開張およそ45 mm。黒褐色の地色に橙色の帯があり、その中に黒点が縦に並ぶ。後翅裏面の橙色帯の内側に白い帯がはっきりと現れる。幼虫はイネ科、カヤツリグサ科の草本を食べることが各地から記録されているが、県内では調べられていない。1年目の冬を卵で越し、2年目は幼虫で越冬し、3年目に成虫になるとされるが、はっきりとは調べられていない。高山蝶の一種。
2.分布
国外ではヨーロッパからシベリアを経てサハリン、朝鮮半島北部にわたり広く、国内では北海道大雪山塊と利尻島、本州中部山岳地域に分布する。県内では南アルプスの主稜に産地は多く、浜松市天竜区水窪町中ノ尾根山が日本の南限であり、世界的にも南限となる。
3.生息環境
森林限界付近の高茎草原の“お花畑”や雪崩草原、樹林帯に生じた小草地が分布の中心となるが、開放的な草原ではなく、ある程度樹林を混じえた疎林を好む。垂直分布の下限はベニヒカゲより高いが、森林限界より高い場所では発生していない。
4.生息状況
南アルプス主稜線は、良好な自然環境が保たれており、個体数は多い。シカの食害により“お花畑”の植生が損なわれ、蜜源として成虫が集まる場所が縮小している。
5.減少の主要因と脅威
シカの食害による植生の破壊。登山客増加による踏圧に加え、登山者のストックによる植生破壊も無視できない。
6.保護対策
産地の一部は国立公園特別保護地区に含まれ、採集は規制されている。各地の“お花畑”ではシカ侵入防止柵を設置して高山植物を保護しており、これが本種の保護にも役立っている。
(静岡県版レッドデータブックより)
写真提供:特定非営利活動法人静岡県自然史博物館ネットワーク
写真提供:特定非営利活動法人静岡県自然史博物館ネットワーク