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ベニヒカゲ
開張およそ40~45 mm。黒褐色の地色に橙色の帯があり、その中に黒点が縦に並ぶ。産地ごとに橙色の帯と黒点の現れ方の変異が大きく、特に後翅橙色帯の発達度合いは変異が著しい。また、前衛の山など低標高の産地では大型となる。幼虫の食餌植物はイネ科、カヤツリグサ科であるが、県内では詳しくは調べられていない。成虫は年1回発生し、主に8月に見られる。高山蝶の一種。
1.種の解説開張およそ40~45 mm。黒褐色の地色に橙色の帯があり、その中に黒点が縦に並ぶ。産地ごとに橙色の帯と黒点の現れ方の変異が大きく、特に後翅橙色帯の発達度合いは変異が著しい。また、前衛の山など低標高の産地では大型となる。幼虫の食餌植物はイネ科、カヤツリグサ科であるが、県内では詳しくは調べられていない。成虫は年1回発生し、主に8月に見られる。高山蝶の一種。
2.分布
本種を一括nerieneとして扱えば、国外ではサハリン、ロシア極東、モンゴル、中国東北部、朝鮮半島などに、国内では北海道、本州の東北から中部山岳地域に分布する。中部山岳地域のものはいわゆる“高山蝶”の一種とされる。県内では南アルプス主稜からは多くの記録があり、それから南へ続く白倉山(水窪町)、大無間山(静岡市井川)、山伏(静岡市梅ヶ島)などがそれぞれの支稜の南限となっている。
3.生息環境
標高2,000~2,500 mの森林限界付近の“お花畑”に最も多い。沢の源頭などに発達する高茎草原、稜線付近の雪崩草原、樹林帯の縁の小草地など、“お花畑”や、谷筋の草付などの開けた場所に多い。
4.生息状況
南アルプス主稜線は良好な自然環境が保たれており、個体数は多い。一方、前衛の山々や谷筋などの産地の中には静岡市山伏のようにササが大きくなり消滅した産地や、砂防ダム建設などにより減少している場所がある。シカの食害により“お花畑”の植生が損なわれ、蜜源として成虫が集まる場所が縮小している。
5.減少の主要因と脅威
ササが大きくなり消滅した産地や、シカの食害による植生の破壊、登山客増加による踏圧に加え、登山者のストックによる植生破壊も無視できない。
6.保護対策
生息地の一部は国立公園特別保護地区に含まれ、採集は規制されている。各地のお花畑ではシカ侵入防止柵を設置して高山植物を保護しており、これが本種の保護にも役立っている。
(静岡県版レッドデータブックより)
写真提供:特定非営利活動法人静岡県自然史博物館ネットワーク
写真提供:特定非営利活動法人静岡県自然史博物館ネットワーク